各受賞プロジェクトのご紹介

2019年度の優れたマーケティング活動を表彰する「日本マーケティング大賞」選考委員会(選考委員長・安部 順一 読売新聞東京本社 常務取締役 広告局長)は、「第12回日本マーケティング大賞 グランプリ」に、「ラグビーワールドカップ2019 日本大会成功に向けたマーケティング活動」を選出しました。

また、「準グランプリ」に、「WORKMAN Plusのマーケティング」を選出、奨励賞4件、地域賞3件を選びました。

 

日本マーケティング大賞
選考基準
総合的に周到なマーケティング計画のもと、市場へのインパクト、独自性、ブランド定着性など、目覚ましい成果を上げたプロジェクトを選考委員会で選定。

ラグビーワールドカップ2019 日本大会成功に向けたマーケティング活動
(公財)日本ラグビーフットボール協会
(公財)ラグビーワールドカップ2019組織委員会

 

受賞理由

ラグビーワールドカップ2019日本大会は、アジアで初めて開催されたラグビーワールドカップであり、ラグビーの地平線を広げた大会であると位置付けられている。

ラグビー協会、組織委員会、12開催都市の自治体、そして、放送局や新聞社を始めとしたメディア等、各主体が大会成功に向け一丸となり、大会の機運醸成だけでなく、日本におけるラグビーの価値を向上させた。

これまで、野球、サッカー等に比べ人気の低かったラグビーを、真のメジャースポーツへと押し上げることを目標に、大会はもちろん、競技自体への関心を高めるコミュニケーションを実施。「肉体同士のぶつかり合い」「勇敢に立ち向かう姿勢」「様々な個性がぶつかるダイバーシティ」といった、ラグビーの持つ本質的な魅力を押し出し、競技自体への理解や興味を国民全体に浸透させた。

同時に、SNS、雑誌連携、キャラクターグッズの開発等を通して、若者、女性など、これまでラグビーに馴染みのなかった“にわかファン”層を拡大。準備期間から、期間中、閉幕後まで、継続的に情報発信を行い、感動の瞬間を作り出すことに成功。超満員のスタジアム、高視聴率につながり、日本列島に空前絶後のラグビーブームを巻き起こした。

閉幕後の国内トップリーグ人気、ラグビースクール加入者急増等、ラグビーの熱は、まだまだ続いている。

 

日本マーケティング大賞 準グランプリ
選考基準
グランプリに準じる成果を上げたプロジェクトを選考委員会で選定。

WORKMAN Plusのマーケティング 
株式会社 ワークマン

 

受賞理由

株式会社ワークマンは、「機能と価格に新基準」というコンセプトで職人向け作業服の販売を手がけています。

その中で培った技術力やオペレーション力を活かして、“低価格かつ機能的な”アウトドアウェアの新業態「WORKMAN Plus」を2018年9月から展開しました。

2020年3月末では17ケ月連続2桁増、店舗数868店です。

そのマーケティング手法では、作業着ブランドを女性が着る、「ワークマン女子」という新顧客の創造やワークマンと同じ商品を、見せ方の工夫(マネキン、照明、陳列方法等)、「過酷ファッションショー」などで新しく見せることで売上につなげました。

今までスポーツアウトドアはブランドメーカーが独占していた市場を、新たな切り口で市場を創造しました。

 

 

日本マーケティング大賞 奨励賞
選考基準
独自性や先行性、社会課題解決性、新しいマーケティングの芽など、規模は小さいながらもキラリと光るマーケティング・プロジェクトを選考委員会で選定。

「おすそわけ」事業の運営 
特定非営利活動法人 おてらおやつクラブ

 

受賞理由

おそなえ、おさがり、おすそわけ。

おてらおやつクラブのおすそわけ事業は、お寺にお供えされる様々な「おそなえ」を「おさがり」として、支援団体を通じて経済的に困難な家庭へ「おすそわけ」する活動である。

いま、日本国内の子どもの7人に1人が貧困状態にあるといわれている。一日一食の食事に困る子どもがいる一方で、お寺にはたくさんの食べ物がお供えされる。

当事業は、活動趣旨に賛同する全国のお寺と、子どもやひとり親家庭などを支援する各地域の団体をマッチングして菓子や果物、食品や日用品を届ける「仏流ネットワーク」を構築し、地域単位で貧困問題の解消を目指す活動である。

昨夏からは石井食品、ユニリーバなど企業との連携を開始し、販売不可となった企業在庫や災害備蓄品を寺院が受け皿となって仏前に「おそなえ」して「おすそわけ」することで、企業のフードロス・廃棄ロスを抑制するパートナーへと役割が広がっている。

 

全国へと広がる地域創生マーケティングフレーム「絶メシ」プロジェクト
高崎市、柳川市、石川県、テレビ東京、BSフジ他

 

受賞理由

日本の地方では大型商業施設などの増加により、人々が一極集中することにより、古くから町中にあった個人店などが次々に閉店し、町の過疎化が進んでいる。

全国に見られるこの問題を解決すべく目をつけたのは、古い老舗店が閉店することを知ると、人々やメディアはその存在を急に惜しみ、ソーシャルで拡散したり、お店に訪れたりする、という行動心理だった。

そこで、“なくなってしまいそうな古い飲食店グルメ”を「絶メシ」と名付け、その魅力を紹介する初のローカルグルメサービス「絶メシリスト」を群馬県高崎市、福岡県柳川市、石川県の3都市にて展開。

「絶メシ」は地方が抱える個人店廃業問題への新たな取り組みとして、全国のメディアで取り上げられ、多くの人々が古い飲食店へともう1度足を運ぶようになり、地方のまちが再び活気を取り戻はじめている。

成果としては、PR効果は、累計30億円以上、絶メシ掲載店の売上げは、平均30%増加した。

さらには書籍化や地上波ドラマ化もされ、地方自治体・旅行/交通系などの様々な絶メシプロジェクトが進行中。

 

「住民との共創」で、衰退していた団地の未来を変えていく。「茶山台団地」再生プロジェクト
大阪府住宅供給公社
株式会社 オズマピーアール

 

受賞理由

昭和45年に、大阪府堺市に建てられた「茶山台団地」は、全戸(約1,000戸)が満室の時期もあったが年月が経ち、若者離れが進み、住民が年々減少。住民の高齢化や空き室も問題になりました。

高齢化して衰退しつつある団地の再生という全国的な社会課題を、住民との共創マーケティングでなしとげた。

その例として、ユニークなリノベーションとして2世帯部屋をつなげた「ニコイチ」、高齢者や働く主婦へ小分けのおかずを提供する「やまわけキッチン」共同食堂、地元の農産物を広場で販売する「ちゃやマルシェ」など住民同士の交流の場が生まれた。

賃貸団地の概念を超えた様々な新価値創造を、住民のリアルニーズ発で実現した。

 

みんなで考える桃太郎 ~新聞広告から生まれた中学校の道徳授業~
一般社団法人Think the Earth

 

受賞理由

2019年、中学校の道徳が必修化された。国は「考え、議論する道徳」という方針を立てたが、教科書改定や指導方針が精緻化されておらず先生たちが混乱していた。

一般社団法人Think the Earthは、2014年に話題となった新聞広告「ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました。」が、新しい道徳教育の指針になると教育現場で再度話題になったことに注目。制作したクリエイターと中学校教師をつなげ、ワークショップ型道徳授業「みんなで考える桃太郎」を制作した。

授業は、50×3コマで、先生のための指導要領作成はもちろん、「登場人物サイコロ」「場面選択シート」などのクリエイティブツールを独自開発。桃太郎生誕の地岡山ではじまった授業は、全国へと広がり、東京都港区では教育委員会のカルキュラムとなった。

一般社団法人、広告会社、教育機関の3社の協業からうまれたSDGsのひとつのモデルケースである。

 

 

日本マーケティング大賞 地域賞
選考基準
優れたマーケティング・プロジェクトであることに加えて、経営資源が地域にあること、地域活性化に資すること、地域の特徴を活かした事業であることが条件。日本マーケティング協会の関西、九州、北海道支部でそれぞれ選考し、実行委員会・選考委員会が承認する。

アドベンチャーワールド循環型パークを⽬指したSDGsの取り組み
株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)/関西地区

 

受賞理由

株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)は、「こころでときを創るSmileカンパニー」を企業理念として、循環型パークを目指し、SDGsへの取り組みを行なっている。テーマパークとして動物たちとのふれあいやエンターテイメントなどの活動を通じて、人々のSmileを創造し、「笑顔あふれる明るい豊かな社会の実現」に寄与している。

SDGsが目標とする「持続可能な社会の実現」に共感し、2019年よりSDGsに積極的に取り組むようになる。

従来から行っていた希少動物の保護繁殖、パンダの主食である竹の食べ残しの有効活用、石灰石を主原料とした新素材「LIMEX」の導入するなど環境問題にも取り組んでいる。また子育て世代が活躍できるよう企業内保育園の開園、障がいのある子どもとその家族をパークに招待する「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」開催など、すべての人が楽しむことができるより良い社会を、未来の子どもたちに贈り継ぐ「循環型パーク」づくりに取り組んでいる。

 

佐賀海苔を代表とする、県産品PRプロジェクト「あさご藩」
佐賀県/九州地区

 

受賞理由

佐賀県は豊穣な干潟で有名な有明海で養殖される海苔や呼子のイカなどの水産物、肥沃な佐賀平野でとれる米や野菜、佐賀牛などの農産物や畜産物など一次産品の生産が、県の重要な産業基盤として形成されている。

その佐賀県において、2016年度から4年間に渡り実施された県産品のPRプロジェクトが、本事業である「あさご藩」プロジェクトである。

これは、素材の良さが伝わりやすい”朝ごはん”にふさわしい海苔や米、野菜などの県産品を集め、それらを主役にした「あさご藩」という架空の藩を設定し、その「あさご藩」というブランドフレームの中で、海苔を中心に様々な県産品のPRを行ってきた。

展開のコンセプトとしては以下の3点が挙げられる。

1.県産品を”朝ごはん”というテーマで売り込むことで、より人々の生活に密着した利用シーンの訴求が可能

2.佐賀の歴史性(元々明治維新の立役者である肥前国であり”武士道”が記された土地柄でもある)を活かす設定で、佐賀そのものの魅力創出に繋げる

3.”朝食”の推奨という、社会への提言を盛り込むことで、社会性を踏まえた文脈を構築

最初の年である2016年度より、WEBサイトやWEBムービーの公開などPRを始め、2017年度からは海苔を中心にしたプロモーション「世界初の海苔でできたチラシ=海苔コミチラシ」などを展開。2018年度からは九州佐賀国際空港に、「みやげ話」などがプリントされた海苔を販売する「佐賀海苔の自販機」を設置するなどし、県内外で高い話題性を獲得した。

 

One Hokkaido Project ~北海道内テレビ6局合同プロジェクト~
One Hokkaido Project実行委員会/北海道地区

 

受賞理由

北海道内のテレビ6局(NHK札幌放送局、北海道放送、札幌テレビ放送、北海道テレビ、北海道文化放送、テレビ北海道)は、北海道命名150年を迎えた記念すべき年に、新たな北海道の歌「私たちの道」の制作と、6局合同制作番組「みんなで道フェス!2019」(2019年2月23日放送)のサイマル放送(同内容・同時生放送)を実施した。

プロジェクトのコンセプトは「伝えていこう」。北海道のローカルテレビ局がこれまでに地域で果たしてきた大きな役割は、地域の情報発信だ。ローカルテレビ局は、今までもこれからも、北海道の未来を見据え、そこで暮らす人々の幸せを願い、地域の今を伝え続ける役割を担っていく。「ずっと守っていきたい北海道の自然環境」「いつまでも忘れてほしくない北海道の歴史」「未来へと継承していきたい北海道の伝統や文化」など、その想いを歌にして、番組にして、道民のみなさんと一緒に未来へ伝えていくプロジェクトを展開した。

スポンサーメリットとして、6局同時放送の番組に提供することにより、個別の番組提供よりも効率の良い訴求が可能になった他、「私たちの道」をプロモーションに使用する協賛社もあり、番組内の展開に留まらない新たなマーケティングの形を示すことが出来た。

 

第12回日本マーケティング大賞 概要

『日本マーケティング大賞』は、厳しい経済環境の中でも、企業・自治体・団体等の組織における新しいマーケティングやコミュニケーションの手法、もしくはビジネスモデルの開発を積極的に促すことで、消費者の生活の向上と経済・社会の活性化に資する活動を奨励し、マーケティングのプレステージを高めることを目的として2007年に発表、第1回は2009年より実施されました。12回目となる本年は、日本の市場が成熟化する中で、成長につながる創意工夫が凝らされたプロジェクトが多くエントリー、厳選な審査の中から上記が選出されました。
対象活動
社会に新しく需要を喚起、あるいは市場を再活性した優れたマーケティング活動

<対象活動の具体例>
  • a 新たにマーケティングの概念を取り入れた企業やNPO、自治体等の活動
  • b 新しい価値の提案やトレンドを生み出した活動
  • c 生活者・社会との共存・共生/社会的課題の解決に貢献した活動
  • d 社内外、産・官・学とのコラボレーションを取り入れた活動、または生活者との共創
  • e BtoBビジネスや専門市場におけるマーケティングとして際立った活動
  • f グローバル市場で成果のあった活動
  • g マーケティングによりブレイクスルーをもたらした活動
  • h オリジナルな新しいビジネスモデルの構築
  • i 規模が小さくても、キラリと光る活動
  • j 地域特性を活かしたマーケティング活動
  • k 上記以外でも、今年を象徴するに値する新鮮な戦略提案(マーケティング提案)
対象範囲
日本市場における企業・団体・組織の活動、および日本法人の海外市場での活動
(自治体、NPO、大学・病院なども含む)
対象期間
2019年1月1日から2020年1月31日までの企業・自治体・団体の活動
推薦資格
日本マーケティング協会会員および日本マーケティング学会会員(自薦・他薦を含む)
審査方法
選考委員により、推薦資料を基に追加情報を含めて討議を実施し、選定
審査結果
2020年6月19日(金) 「日本マーケティング大賞 表彰式」にて各賞贈呈
選考委員
「日本マーケティング大賞」選考委員会(産業界・学界から17委員)
選考委員長:安部 順一(読売新聞東京本社常務取締役 広告局長)
主  催
公益社団法人 日本マーケティング協会
協  力
日本マーケティング学会
後  援
経済産業省

 

 

2019.10月現在

(敬称略)

 

実行委員長 藤重 貞慶 JMA会長(ライオン㈱ 相談役)
実行副委員長 内田 和成 JMA理事長(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授)
委 員 石井 直 JMA副会長(㈱電通 会長(顧問))
石原 進 JMA副会長(九州旅客鉄道㈱ 相談役)
村田 正敏 JMA副会長(北海道新聞社 前代表取締役会長) 
八木 隆史 JMA副会長(㈱電通 執行役員 関西支社長) 
高石 一朝 JMA専務理事

 

選考委員長 安部 順一 読売新聞東京本社 常務取締役広告局長(新任)
選考副委員長 杉田 浩章 ボストンコンサルティンググループ 日本代表(新任)

委 員

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恩藏  直人 早稲田大学 商学学術院 教授
古川 一郎 武蔵野大学 経済学部 教授
杉谷 陽子 上智大学 経済学部 経営学科長(新任)
萩原 一平 ㈱NTTデータ経営研究所 研究理事(新任)
奥野 圭 ㈱オリエンタルランド マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション部長(新任)
湯藤 久美子 花王㈱ マーケティング開発室 室長(JMA理事)
林 信貴 ㈱電通 執行役員(新任)
矢野 敦子 日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 マーケティング部長(新任)
岩﨑 拓 ㈱博報堂 執行役員【JMA理事】(新任)
岡山 晃久 パナソニック㈱ コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 部長【JMA理事】(新任)
福田 裕一朗 毎日新聞社 営業総本部 総務(新任)
矢代 卓 ㈱マガジハウス 広告局 局長
赤金 重幸 読売新聞東京本社 広告局次長
松本 道夫 ライオン㈱ コンシューマーナレッジセンター 部長(新任)
鈴木 由美子 ㈱ロッテ ロッテノベーション本部 マーケティング部 宣伝担当部長(新任)

 

運営事務局 服部 峰郎 日本マーケティング協会 事務局長
白根 有一 日本マーケティング協会 研究開発局 エグゼクティブコンサルタント
河西 章宏 日本マーケティング協会 関西支部 事務局長
水戸 信之 日本マーケティング協会 関西支部 エグゼクティブマネージャー
竹原 聖人 日本マーケティング協会 研究開発局 シニアコンサルタント
大坪 満 日本マーケティング協会 九州支部 事務局長
梶原 仁 日本マーケティング協会 北海道支部 事務局長
伊藤 梓沙 日本マーケティング協会 業務推進局