各受賞プロジェクトのご紹介

公益社団法人 日本マーケティング協会は、優れたマーケティング活動を表彰する『第4回 日本マーケティング大賞 表彰式』を5月28日(月)15:50~16:50、アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)にて開催しました。大賞を受賞した株式会社タニタの谷田千里代表取締役社長をはじめ各賞の受賞者が参加され、奨励賞5件、地域賞3件を贈呈しました。

 

日本マーケティング大賞

『タニタの社員食堂を起点としたビジネス展開』 株式会社タニタ

受賞理由

社員食堂を基本にしたレシピ本が大ヒットしたのを契機に、レストラン経営から弁当販売まで、それぞれのビジネスを連動させながら、食や健康に対する社会の意識を高め、本業である家庭用体重計や体脂肪計の潜在的な顧客層を掘り起こしたマーケティング力は大賞に値すると高い評価を受けました。ハードな計測機器メーカーが上手にソフトを組み入れて社内外の戦略PRに利用したしたたかさ、出版や食堂などにビジネスの機会を広げることにより世の中のニーズを上手く捉えた手法は卓越しており、2011年で最も話題となったマーケティングの優秀事例です。
世の中の「健康」志向と食への関心の高まりを背景に、社員の健康に配慮した社員食堂のメニューづくりからスタートして、2010年1月に社員食堂のレシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』を出版。このレシピ本の続編と合わせて2012年1月現在の累計で436万部を売る大ヒットとなりました。その後、新たに「丸の内タニタ食堂」を開業させて外食ビジネスにも参入、さらには弁当の販売など食品分野への展開と、一見偶発的とも見られている「社員食堂」への注目を、間髪入れずにマーケティング活動につなげたスピード感や柔軟性は大いに評価できるとの声が多数ありました。

同社は体重計などの計測器メーカーとして長年にわたり市場をリードしてきましたが、「社員食堂」という社内リソースを上手に活用し、消費者の健康意識を高めた上で本業のブランドイメージも向上させ、計測器の販売へと循環させたビジネスモデルは、新しいマーケティングの可能性を期待させるものです。また、顧客の求めているものは体重の測定ではなく、健康的に痩せる事であると捉えて、計測器の製造・販売に留まらず多角化を進めている点が秀透であるとのコメントもありました。
家庭用・業務用計測器の製造・販売を主たる事業内容としてきた株式会社タニタは、「はかるを通じて世界の人々の健康づくりに貢献する」を企業理念に、新しい健康習慣を積極的に提案しています。

 

大賞受賞スピーチを行う
株式会社タニタ 代表取締役社長 谷田千里氏

日本マーケティング大賞 奨励賞

発売41年目の「ほんだし」再活性化プロジェクト』 味の素株式会社

受賞理由

トリプルメディアを活用した需要創造コミュニケーション

発売から41年経つロングセラーブランドを、これまでのブランド資産を活かしつつ、新しいメディアを活用して顧客との双方向コミュニケーションを組織的に取り組んで成功している点が高く評価されました。特に顧客の声をSNSから拾い上げ、メニュー提案に結び付けるなど効果的に情報を発信する仕掛けは秀透との声がありました。若者を中心とした和食離れなどの食生活の変化に伴い市場としてはダウントレンドでしたが、社会的な内食回帰の潮流をもうまくとらながらブランドを再活性化することで食卓への出現頻度拡大と販売増を達成し、ロングセラーブランドの可能性を示す好例となりました。

 

クリスタルカップを授受する
味の素株式会社 執行役員家庭用事業部長 品田英明氏

『みんなの最先端ロボット「やすかわくん」』 株式会社安川電機

受賞理由

B2B企業の対消費者アプローチ

「多関節技術」では世界シェアNo.1の産業財メーカーの素晴らしい技術が「全自動ソフトクリーム作成ロボット やすかわくん」を通して社会にどのように貢献しているのかを分かりやすく伝える事に成功し、産業財メーカーの新しい広報活動の可能性を示しているとして高い評価を受けました。「技術の体験化」というアイデアによって消費者に優れた技術力を伝える事に成功したマーケティング発想は秀透で、その反響、成果を考えると奨励賞としてふさわしいとのコメントが寄せられました。「やすかわくん」を通して新しい顧客との接点ができただけでなく、サービスロボット事業部を立ち上げるなど、同社のビジネス展開の拡大に貢献しました。

 

クリスタルカップを授受する
安川電機株式会社 取締役ロボット事業部長 南善勝氏

『初音ミク N次創作による創作の拡がり』 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社

受賞理由

クリエイターの創作活動を奨励する新しいビジネスの仕組み

「初音ミク」は歌声合成ソフトウェアとして発売。ガイドラインを定めて個人による非営利の範囲でキャラクターの二次創作を認めたほか、クリエイターによる二次創作作品の投稿を受け付けて共有するサイトを設けるなど、創作活動を支援する新しい仕組みとして、既存の著作権の概念やビジネスモデルを打ち破って広まった点が高く評価されました。世界で評価されている日本のコンテンツ文化を、全く新しいスタイルで輸出させるビジネススタイルを生み出すきっかけを作ったという声もありました。北海道発のベンチャー企業が、無限の広がりを持つテクノロジーを開発し、海外の「初音ミク」のライブコンサートの成功に代表されるように、世界に展開させた力は、日本のソフトパワーの新しい可能性やエネルギーを感じさせます。

 

クリスタルカップを授受する
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役 伊藤博之氏

『googleのプラットフォームを活かした中小企業支援活動』 グーグル株式会社

受賞理由

被災地や中小企業ビジネスを支援するソーシャル・マーケティング

東日本大震災という未曽有の災害の直後に、被災地域への関心を高めるだけでなく、被災地企業の営業状況告知にはじまり地域メディアを巻き込んだ復興支援につながる仕組みをつくった「東日本ビジネス支援サイト」、無料でホームページを作成できるツールを提供し、中小企業が展開する地域ビジネスの活性化に活用された「みんなのビジネスオンライン」など、インターネットを活用し、中小企業と顧客を結びつけるプラットフォームを提供する手法は、社会に貢献する新たなマーケティングの可能性を感じさせるという高い評価を受けました。これらの活動に代表される日本活性化のための支援活動を通して、グーグル株式会社が社会的な評価を高めた年になりました。

 

クリスタルカップを授受する
グーグル株式会社 SMB統括部長 伊佐裕也氏

『AKB48を支えるマーケティング戦略』 秋元康氏

受賞理由

顧客との新しい関係づくりの成功

「会いに行けるアイドル」というコンセプトをもとに、劇場から新聞、テレビ、デジタル、ソーシャルネットワークなど、あらゆるメディアを活用しながらストーリー性のある緻密なマーケティングを展開し、圧倒的な成功を収めました。新たな企画の発表から完成までをオープンにし、ファンを巻き込んだストーリーを展開するなど新しい試みを随時活用し、日本のエンターテイメント市場で最も成功したグループとなりました。今や国民的な人気を得てヒット曲を連発、海外には斬新なアイドルのフォーマット戦略で挑むなど成長を続けています。

 

クリスタルカップを授受する
秋元康氏代理の
株式会社電通 第4営業局部長 藤田浩幸氏

 

日本マーケティング大賞 地域賞

あべのマーケットパーク キューズモールの"地域共生"型開発・運営』 東急不動産株式会社

受賞理由

「あべのマーケットパーク キューズモール」は、商業施設の「地域共生」をテーマに掲げた、大阪阿倍野に位置するショッピングセンターです。当施設では、お買い物時に付与されるカードポイントを地域貢献に活かす仕組み作り、地域が誇る文化遺産や物産品に触れ合う機会の創出、地域の大学や企業と連携した文化発信拠点の創設といった活動を積極的に行っています。顧客のご協力により積み立てたカードポイントで絵本を購入し、地元大阪市立大学医学部附属病院の小児病棟に寄付する活動や、地元大学商学部の学生、大阪府飴菓菓子組合加盟の製菓メーカー7社と協力し、大阪のあめちゃん文化を発信する「アベノあめ村」をオープンさせるなど、周辺地域との連携を通して地域の活性化に取り組んでいます。単なる消費だけのつながりでなく、施設を通し、この地域で暮らすことの生きがいや誇りを感じてもらい、生涯ロイヤルカスタマーの獲得を目指しています。

 

東急不動産株式会社 関西事業部統括部長 吉浦勝博氏

『九州新幹線の全線開業プロジェクト』 九州旅客鉄道株式会社

受賞理由

九州地域の生活者を取り込んだ開業キャンペーンの反響の大きさはいうまでもなく、九州全体の地域ブランドの確立に貢献し、地元の産業の活性化でも実績を上げている事など、九州地域の枠を超えて、全国、関西でも、非常に高い評価を受けました。博多駅ビルに一年間で5420万人が来店するなど相乗効果も大きく、九州経済に影響を与える様々な取組みがJR九州のブランドを中心に連携が取れているという声がありました。JR九州の決算は過去最高を記録し、JR西日本の増収見通し向上にも貢献するなど、地域を越えた大きな成果が見られます。

 

クリスタルカップを授受する
九州旅客鉄道株式会社 常務取締役 青柳俊彦氏

『くるるの杜を通した食と農の広報マーケティング』 ホクレン農業協同組合連合会

受賞理由

消費者と生産者を結ぶ「食と農のふれあい広場」として2010年に開業しました。体験型農場、調理加工体験施設、地産地消型レストランなどを運営し、これらの施設を有機的に連携させることで、生産から消費までのプロセスを一体的に体験できる施設として、直売所に開業一年で24万人が訪れるなど連日多くの利用者でにぎわっています。新千歳空港と札幌の中間地点に立地し、道外、海外での北海道の農産物のプロモーションに貢献しています。

 

クリスタルカップを授受する
生活協同組合コープさっぽろ 専務理事 山口敏文氏

 

後藤卓也JMA会長と谷田千里氏

受賞者を囲んで記念撮影

 

 

2010.10月現在
(敬称略)

実行委員長 後藤 卓也 JMA会長(花王㈱ 前会長
実行副委員長 嶋口 充輝 JMA理事長(法政大学大学院 教授)
委 員 俣木 盾夫 JMA副会長(㈱)電通 相談役)
石原 進 JMA副会長(九州旅客鉄道㈱ 代表取締役会長)
村田 正敏 JMA副会長(北海道新聞社 代表取締役社長) 
内海 朋基 JMA理事・関西支部長(㈱電通 取締役常務執行役員関西支社長)
石橋 正明 JMA専務理事

選考委員長 高橋 雄一 日本経済新聞社 常務取締役
選考副委員長 松田 久一 ㈱JMR生活総合研究所 代表取締役
委 員 恩藏  直人 早稲田大学 商学学術院長兼商学部長・教授
古川 一郎 一橋大学大学院 商学研究科 教授
竹内 淑恵 法政大学 経営学部 教授
新井 範子 上智大学 経済学部 教授
竹村 正明 明治大学 商学部 准教授
岡本 達也 味の素㈱ 食品事業本部 家庭品事業部 マーケティンググループ長
樺沢 正人 ㈱NTTドコモ プロモーション部長
岩村 水樹 グーグル㈱ 執行役員マーケティング本部
廣瀬 千秋 産業経済新聞社 営業局 局次長
平間 陽一郎 ソニーマーケティング㈱ コミュニケーション・プラットフォーム部門 部門長
髙林 和明 東レ㈱マーケティング企画室長 JMA理
小笠原 恒夫 ㈱電通 ストラテジック・プランニング局長 JMA理事
田中 廣 ㈱博報堂 執行役員 JMA理事
保母 拡一朗 日本経済新聞社 クロスメディア営業局 局次長
滝口 一雄 ㈱三越伊勢丹 営業本部 営業政策部 顧客政策担当部長

運営事務局 石橋 正明 日本マーケティング協会 専務理事
  都丸 幸弘 日本マーケティング協会 事務局長
  竹中 雄三 日本マーケティング協会 研究開発局長
細見 幸久 日本マーケティング協会 関西支部事務局長
佐野 文宏 日本マーケティング協会 九州支部事務局長
坂口 行男 日本マーケティング協会 北海道支部事務局長
竹原 聖人 日本マーケティング協会 営業企画部長
服部 峰郎 日本マーケティング協会 研究開発局課長
小島 弘雄 日本マーケティング協会 関西支部業務推進部主任