様々な製品やサービスが成熟し、高度にコモディティ化が進む近年において、「クチコミ」の重要性は増しており、SNS公式アカウントや、コミュニティなど顧客とのリレーションに注力する企業が増えています。
しかし、SNSに代表される新しい顧客接点は“一方的な情報発信先のひとつ”という位置付けに留まっており、企業内でも十分に活用できているとは言えない状況があります。
流行のSNSなど、個別のサービスに取り組むのではなく、ブランドコミュニケーション全体の中で、“どの様な顧客と強く繋がるべきか?”、“各接点がどの様な役割を果たすのか?”を考え、顧客接点での活動を再設計する重要性が高くなっています。
その様な背景の中で注目されているのが、自発的にクチコミや推奨をおこなう「アンバサダー(=大使)」を活性化させる取り組みです。
従来のアンバサダーは影響力/認知度が高い、著名人やスポーツ選手が対象でしたが、ブログやSNSの普及により一般のファンをアンバサダーと捉え、「リアルな体験情報(クチコミ)」を伝えてもらう活動が増えています。
ファンの育成には適切な働きかけが重要
そもそも顧客やファンを集めたからといって、自発的にクチコミするようになるかというとそうではありません。“わざわざ”誰かに伝えたくなる、オススメしたくなるには企業側のサポート、働きかけが重要です。
クチコミ活性化の4要素
・動機付け
自分が対象のブランドのファンである、という自覚を持つため手段としてアンバサダーの登録行為を通じておこないます。
・クチコミ機会
あえて誰かに伝えたくなるキッカケをつくるため、企業からの呼びかけや、特別な体験を提供することで、アンバサダーを“可視化”します。
・知識
同じ「好き」でも誰かに伝えるときには、その理由=知識が説得力を生みます。「●●だから、好き」、この●●がファンに伝わった際に、誰かに伝えたくなるのです。
・フィードバック
アンバサダーの活動を眺めるだけでなく、“ちゃんと見ていますよ”、“感謝しています”と伝えることで、アンバサダーは活性化しクチコミの「量」や「質」が向上します。
通常であれば商品購入を起点に、新規/リピート顧客を生み出すための仕組みを考えますが、アンバサダー施策においては、どの様な仕組みでひとりひとりの「ファン度」を高め、期待する「ヒーローアンバサダー」に育成していくのか、どのようにポジティブなループに入ってもらうかを設計する必要があります(図1)。
アンバサダーは身近な顧客接点にこそ存在する
「アンバサダー」というグループを新たに立ち上げると、既存のSNSやメルマガと何が違うのか、自社のもつ資産を含めて整理する必要があります。
当社はこの棚卸しから設計に関わる機会が多いのですが、重要なポイントだと感じるのは「顧客/ファンの視点で考える」ということです。
顧客の育成におけるステップを設定し、どの様な活動を通じて期待するアンバサダーになってもらうのかにフォーカスすると整理がしやすいのではないでしょうか。
アンバサダーとの取り組みを考える上で“地図”となるのが「アンバサダーステップ」です(図2)。
企業/ブランドごとにステップは異なりますが、ポジティブループを念頭に置きつつ、以下のポイントを考え設計することが重要です。
・アンバサダーに期待する活動は何か?
・その活動を阻害する壁は何か?
・活動を推進/阻害する壁を超えるために必要な機会は何か?
・アンバサダーの活動を多くのファンに伝えるために必要な支援は何か?
・アンバサダーの周囲の友人はどんな印象・感情をいだくか、どんな行動に至るか?
これらのポイントを考える過程では、できるだけ社内の異なる部署のメンバーも一緒に議論することが望ましく、検討の過程で企業内にある「思わぬ資産」がアンバサダー活性化に有効であることに気付くことも多々あります。
アンバサダープログラムは「興味のない人」を振り向かせるものではなく、ファンを活性化させるために何が必要かを考える視点こそが重要であり、極端にいうと新たにお金をかけなくてもできることは沢山あります。
ブランドの価値や魅力を“正しく”伝えるためには、もう一歩ファンと向き合うことが必要であり、これこそが伝わらない時代における差別化要因となるのではないでしょうか。
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図1 アンバサダー活性化のポジティブループ
図2 アンバサダー育成ステップ
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