ユニ・チャーム㈱

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今回は、マーケティング検定(内閣府認定試験)を新入社員教育に導入しているユニ・チャーム株式会社(以下、ユニ・チャーム)で人事を担当する渡辺幸成さんと広報を担当する渡邊仁志さんにお話を伺いました。

 INTERVIEW
 
 
渡辺幸成さん
理事
グローバル人事総務本部
人事部長 兼 いきいき健康推進室長

 

 

 

 
 
渡邊仁志さん
ESG本部 広報室 室長代理 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

御社の事業について教えてください。

 

渡邊仁志さん:創業は1961年になりまして、元々は建材メーカーとしてスタートしました。日用品として最初に取り扱いを始めたのは生理用品となります。そのきっかけは創業者である高原慶一朗(現在の代表取締役 社長執行役員 高原豪久氏の父)がアメリカ視察で生理用品が山積みされていること見て大きな衝撃を受け、帰国後、「誰もが堂々と生理用品を手に取れるようになれば」と日本で販売を開始しました。

現在、ユニ・チャームの事業はグローバルに拡大しており、80の国と地域で事業を展開しています。主な事業分野は5つです。「ウェルネスケア」(排泄ケアやマスクなど)、「パートナー・アニマル(ペットケア)」(ペットフード・ペット用排泄シートなど)、「フェミニンケア」(ナプキンなど)、「ベビーケア」(ベビー用紙おむつ)、「Kireiケア」(ウェットティッシュや掃除用シートなど)があります。当社の商品は赤ちゃんからお年寄りまで幅広い世代の方々が対象となります。そのため各事業においてより高品質な商品開発と積極的なマーケティング活動を行い、あらゆる世代の顧客満足の向上を目指しています。

 

御社は中長期の目標として「Kyo-sei Life Vision2030」を掲げておられますが、どのような内容でしょうか。

 

渡辺幸成さん:「Kyo-sei Life Vision 2030 ~ For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World ~ 」は、中長期ESG目標として当社が想い描く「2030年のありたい姿」を明示し、具体的に重要な取り組みテーマや目標を設定したものです。

当社ではSDGs達成に貢献することを「Purpose」(存在意義)と考えています。このPurposeを具現化するには、社員一人ひとりが理解・納得・共感し、行動することが重要と考え、「Mission」「Vision」「Value」の三つの階層に分けて具体化しています。

『Kyo-sei Life Vision 2030』を着実に実行することによって、環境問題や社会課題の解決、消費者や地域社会への貢献と、継続的な事業成長を同時に実現することができると考えております。

 

御社の人材育成の考え方をお教えください。

 

渡邊仁志さん:当社は社員の約8割が海外、現地法人の社員となります。国や地域を超えて、一人ひとりが当社の「モノの見方」「考え方」「行動の仕方」を確認できるよう「ユニ・チャームウェイ」として明文化しており、冊子に加えてスマートフォンやタブレット端末からもいつでも確認することができます。日々のOJTや研修を通して「ユニ・チャームウェイ」の考え方あるいは仕事の進め方などの教育を推進することで、良い習慣を身に付け個の才を遺憾なく発揮させて成果を上げていけるようにしています。

 

渡辺幸成さん「ユニ・チャームウェイ」を一人ひとりが実現するために年度単位でゴールと目標を設定し、それを半年ごとの目標設定に落とし込み、週次で実現できるだけのプランを作成しています。しかし、ゴールにたどり着くまでに環境が変化することもあり、当初のプラン通りにスムーズに運ぶとは限りません。そうした環境変化に対応するために“OODAループ”によって観察し、課題を見極め、最適な意思決定をして自律的なアクションを起こす仕組みを週単位で実行しています。

また当社の人材育成は基本的に「会社は必要な応援をするが、自分の人生は自分で決めるものであり、自ら育つものである」としております。どこの会社に勤めるか、どんな人生を送りたいのか、これは人が決めるものではなく自らがつくるものです。これを前提として、10年キャリアビジョン、キャリアプランを全社員が各々で作成し、面談を通して確認します。そうすることで自分自身について考え、将来の目標を見出し、勉強や行動のスピードが増していきます。当社ではこうした内発的動機に基づいた人材育成を一つの方針としています。

(注)OODAループは刻一刻と変化する状況で成果を得るためのフレームワーク。「Observation(観察)」、「Orientation(状況判断)」、「Decision(意思決定)」、「Action(行動)」の4つのステップを繰り返す手法。

 

御社にとってマーケティングはどのような位置づけでしょうか。



渡邊仁志さんマーケティングは職種にかかわらず必要なビジネススキルだと考えております。マーケティング部門は当社の中枢であり、事業戦略を立てるにもマーケティング部門が中心となります。マーケティングの考え方の出発点として他社と異なる点は、当社は人の一生にシームレスにつながれる商品やサービスを提供しています。こうした点が、当社の強みと捉えています。赤ちゃんからお年寄りまで、1人のお客様に対してどれだけシームレスに長く付き合っていけるかということが、当社のマーケティングにおいて最も重要な点となります。具体例を挙げて当社のマーケティングについてご紹介します。

当社の生理用品ブランド『ソフィ』では、「話そう、知ろう。生理のこと。」というスローガンを掲げ、生理に対する新たな価値観を社会全体で創ることを目的に、2019年6月「#NoBagForMe」プロジェクトを発足しました。プロジェクトでは「いかにも生理用品」といった一般的なパッケージとは一線を画す新たなデザインの開発と販売(2019年)や、企業向け研修プログラムとして開発した「みんなの生理研修」を複数社で実施(2020年、2021年)するなど、様々な啓発活動を展開しています。価値観の多様化、多様性(ダイバーシティ)が広がるなかで、「性別や性的指向などにより活躍が制限されない社会への貢献」にマーケティング担当者が自ら主導し、世界中の女性が自分らしく過ごせる社会の実現を目指し生理に対するこれまでの価値観に変化を起こすべく積極的に推進しています。こうした活動が、生理に対する新たな価値観の創造につながっております。モノからコトへ、そしてコトからモノへと物語を通したマーケティングの成せる技です。

マレーシアとシンガポールで発売した『MamyPoko Extra Dry Protect』アンチモスのベビー用の紙おむつは、自然由来のレモングラス成分を含んだマイクロカプセルをおむつの止めるテープに塗布することで、デングウイルスを媒介する蚊をおむつに寄せつけない商品です。これは現地ニーズ発の開発力とマーケティング力が組み合わされて商品化したものになります。

昨年2021年「unicharm 顔がみえマスク」を商品化しましたが、きっかけは聴覚障がいの社員の1人の声でした。1人の意見にも真摯に耳を傾けて、迅速に商品を提供することによって、共感を呼ぶものです。たとえ市場としては小規模であったとしても、利他の心に根付いたマーケティングで商品化をすることで、結果的にブランド価値が向上し、その周辺の商品の価値、ひいては企業としての価値につながり、非常に強固なマーケティングになっていくと考えております。



御社では今年度より新卒採用にマーケティング検定を取り入れておられます。その背景について教えてください。



渡辺幸成さん今回、新卒向けにマーケティング検定を導入した背景としては、やはりマーケティングが職種にかかわらず必須のビジネススキルだと考えている点にあります。早い段階からマーケティング思考を身に付けることを目的として、新入社員のタイミングで導入しました。マーケティング検定は客観的に測れて、指標として明確な点が良いと思いました。新入社員に対する初任給変動制の条件としてマーケティング検定を導入しました。初任給変動制とは入社までに合格条件を満たせば初任給がUPする仕組みです。「努力して成果を出せば対価がついてくる」という経験はビジネスの世界においても重要です。受験を通して、その経験を掴むことにもなると思っております。

 

新入社員向け「初任給変動制」

 入社までに以下の合格条件を満たせば初任給最大15,000円UPとなります。
 (1)MOS試験合格5,000円
 (2)TOEIC試験合格5,000円
 (3) マーケティング検定合格 5,000円
 ※資格取得に向けて、試験料やテキスト代の補助を行っています。
 【合格条件】
 (1)MOS(Microsoft Office Specialist)の3つの試験合格
 ・Excel 2013 エキスパート(上級) Part1
 ・Excel 2013 エキスパート(上級) Part2
 ・PowerPoint 2013
 (2)TOEIC 850点以上取得で合格
 (3) マーケティング検定3級合格

 出典:ユニ・チャーム(株)ホームページ「新卒採用 募集要項」

 

MOSもそうですが、早い段階からエクセルやパワーポイントのスキルがあると業務で1時間かかるものが30分に短縮でき、創出した時間を自己啓発にも有効活用できるため、基本能力を高める努力の必要性を伝えています。そうした意味でマーケティング検定を通してマーケティングの素養や思考を早い段階から身に付けることは今後の成長スピードにつながると思っています。

新人研修では職種にかかわらず営業研修を行いますが、お客さまに自社の商品をプレゼンする際に必ずマーケティング思考が必要になります。マーケティングの原理、原則を活用してお客さまに当社の商品価値やプロモーション案など、データを駆使した上で様々な提案を持っていきます。実践で試行錯誤しながらそこから多くを学び、次に生かしていくことで引き出しが増えていくと思っています。

情報が溢れる時代にあって、今までのように経験や勘や度胸だけでは限界があります。お客様への提案ではデータやファクトに基づき提案をする必要がありますが、その組み立てをするのにマーケティング思考やフレームワークが有用だと思います。試行錯誤しながら自ら苦労をして提案を受け入れられると、達成感は大きく、マーケティングの知識が知恵に代わる瞬間だと思います。こうした一つ一つの成功体験が次への努力の第一歩につながると考えております。

 

マーケティング検定に期待することについて教えてください。



渡辺幸成さん入社時からマーケティングの基礎知識を得ることで、スキルの習得化が効率化されていく、成長スピードが上がることを期待しています。つまり戦力化の前倒しができるのではないかと考えています。マーケティング検定の受験者が増えるほど、マーケティング部門だけではなく、多様な各部門でビジネスのフレームワークを活用できる人が増え、課題設定力や戦略策定力、実行力が高まると思います。当社が目指す「2030年、世界一の実現」を標榜する当社にとりまして、継続的な「差別化」による市場でのトップシェア獲得につなげ、「共生社会の実現」の足掛かりになることを期待しております。

 

 
ユニ・チャーム株式会社コーポレートサイト:
https://www.unicharm.co.jp/ja/home.html
 
社名
ユニ・チャーム株式会社

代表者
代表取締役 社長執行役員 高原 豪久

従業員数
グループ合計16,308名(2021年12月31日) 

事業概要
ベビーケア関連製品、フェミニンケア関連製品、ヘルスケア関連製品、化粧パフ、 ハウスホールド製品、ペットケア関連製品、産業資材、食品包材等の販売
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