トレンドの強度 :マーケティング投資する価値のあるトレンドとは?

トレンドの強度 :マーケティング投資する価値のあるトレンドとは?

(こちらの記事は、マーケティングホライズン2021年8月号『禅に学ぶ』に記載された内容です。)

過日、株式会社コレクシアが実施したウェビナーについて紹介する。コレクシアは消費者行動の専門家として、顧客理解を起点とした分析を得意としている。今回は、トレンドの未来予測は不可能だがその”兆候”を観測することは可能であるとして、その理論が説明された。

 


1.トレンドとは


 

冒頭、マーケティング文脈で使われる「トレンド」とは、「今、何が流行っているのか」と「今後、何が流行るか」の2つに大別されると紹介。この2つは時間軸で分けられる。前者は「現在」のトレンドであり、既に消費者の実感、行動として顕在化しているため、様々な調査やデータから直接観測可能である。

一方、後者は「未来」のトレンドであり、現在は顕在化していないため、予測するしかない。特に製品/サービス開発文脈では2、3年から先を見越した開発工程に対応する必要があるので、予測することは重要である。本ウェビナーでは後者について、予測が困難であることとその代替法について解説された。

世の中にあるトレンド予測の記事やレポートに目を向けると、「2025年までに○○が△△億円市場に拡大」など、テクノロジー起点の環境変化に言及されたものが大半を占める。しかしこれでは粒度が粗すぎて、マーケターが実務に落とし込むのが難しい現状がある。

本来、マーケターに役立つトレンドとは、環境変化だけでなく、そこから「生活者の認識変化→行動変化」にどのように繋がり、「だからこそブランドはどのような価値変化を提供すべきか」というプロセスを捉えたストーリーであるべき、と提起された。

 


2.なぜトレンド予測は不可能なのか?代替案は?


 

次に、なぜトレンド予測は不可能なのかについても言及された。例外はあると前置きしつつ、「予測には予測モデルが必要、すなわち変数をもって立式しなければならない。しかし、ストーリーベースのトレンドを立式するには変数が複雑で現時点では困難」という見解を持っているとのこと。

そこで、予測に代わる方法をドラッカーの言葉をヒントにした理論を提唱された。「すでに生じた将来を予測する」という一説がある。これは「トレンドという大きな流れになる前には、既にその兆候は少数の認識や行動の変化に表れている」と解釈することができる。ということは、それを観測することは「未来のトレンドの兆しを観測すること」になり得るというわけだ。

 


3.トレンドの兆しの見つけ方



①代替行動を見つける

環境変化により従来の価値観(当たり前)が壊れると、これまでのブランドの代わりになる他の解決手段を探して採用することがある。

これを代替行動と呼ぶ。その際、新たな価値観にアジャストするプロダクトが存在する場合はブランドスイッチとなるが、いずれのプロダクトもアジャストせず何らかの不足や不満を感じたり、自身の工夫によって代用品を使用している場合、この行動や背景を観測することでどのブランドも価値提案しきれていない新たなトレンドの兆しを見つけられる可能性がある。

②新奇性を見つける

新奇性とは「人とは少し変わった消費者行動や、こだわり・工夫、提供企業側では想定外の使い方や間違った使い方であるものの、その人自身にとっては意味や価値があること・行動」と定義される。現在主流になっているモノやサービスの使われ方とその意味づけ(定説)に対して、少数派のそれが新奇性に該当し、定説に対する逆説や新説という対比構造になるケースが多い。対比構造で物事を捉えると、アイデアに転換しやすいというメリットを生む。(図1)

これらの視点を元に顧客変化の過程をストーリーで明らかにすることで、トレンドの兆しが見えてくるようだ。以上から、「トレンドの兆し=環境の変化+行動の変化+意味の変化(定説→新説)」で表現できるとのこと。

 


4.トレンドの兆しのまとめ方



コレクシアでは独自にEAMC(Environment-Action-Meaning Change)モデルを開発している。顧客1人の環境の変化、認識・行動の変化、意味の変化を1枚のインフォグラフィクスにまとめ、トレンドの兆しがストーリーとして理解できるものだ。また、補助ツールとして穴埋め形式によって作成できる「EAMCモデル作成シート」もあるようだ。

ウェビナーではインスタント食品業界を例にしてその解説がされた。興味がある人は本記事の末尾のURLを閲覧してほしい。

 


5.トレンドの強度を測る



集められたトレンドの兆しは、あくまでひとつの仮説に過ぎず、定量的な検証が必要になる。そこでポテンシャルを測る方法として「予測」ではなく「強度」を提唱する。強度とは、「同じ課題を持つ人はどの程度存在するか(規模)」「その課題が一過性か?普遍性か?(持続性)」「すでに競合はその課題に対するソリューションを提供しているか?(ホワイトスペース)」など5~10指標を総合判断したものという。

数多くの指標を使用する理由としては、一つの指標によって将来を読み誤るリスクを最小化するために、多面的に指標を用意し、総合的な結果を「強度」として採用することが望ましいから、とコレクシアは考えている。

 

図1~4 《クリックして拡大》

 

最後に、コレクシアでは毎月ウェビナーを開催している。ウェビナーの案内はコレクシアマーケティングケーススタディ(CMC)に掲載している。(https://marketing-casestudy.com/)CMCに会員登録すると次回のウェビナー案内が通知されるようなので、気になる人は登録してはいかがでしょうか。

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